不登校状態の児童・生徒のために設立された八王子市立高尾山学園を対象に、長期的な実地調査を踏まえ、子どもたちのコミュニケーションを支援するツールやワークショップ、イベントのデザイン提案に取り組んだ。
提案にあたってはCDSメンバー8名が、当該年度をとおして「適応指導教室」や「プレイルーム」を中心に子どもたちと接しつつ、デザイン提案の対象やコンセプトを探った。
10/8(水)には拓殖大学八王子国際キャンパスに校長・黒沢正明先生、小学部副校長・南條吉男先生、中学部副校長・中村嘉男先生、他4名の関係者をお招きし、中間発表会を開催、得られた意見とその後の実地調査、一部検証を踏まえ、提案の改良にあたった。
成果となるデザイン提案(一人1件、計8件)は次のとおりである。
1)「あいさつカラー」(荒品 一磨)
友達づくり支援を目的としたA4サイズの塗り絵式の自己紹介シートで、高尾山学園の特徴となる年4回の転入期に対応できるよう4種ある。子どもたちはシート内に表示される4つの質問に対して、「はい・いいえ」の回答ごとに設定された色を選び、色鉛筆で花のイラストを塗り分ける。完成した「あいさつカラー」を廊下に掲示することで、自他の共通点の発見に役立つ。また、空間を彩る効果も期待できる。
2)「あいさつを考えよう!」(木村 航平)
転入の準備期にあたる適応指導教室や転入直後のクラスのアイスブレイクを目的としたオリジナル挨拶づくりワークショップのためのツールで、A4縦位置のプリント2枚で構成される。ワークショップの内容は、ファシリテーター(教員)のもと、まず、拓殖大学の留学生を題材として多様な挨拶の事例を学び、その後、各自でクラス独自の挨拶を考えるものである。
3)「Image Maker」(小泉 明日香)
適応指導教室のアイスブレイクを目的としたカードゲームで、各自カード3枚を引き、それぞれに表示された言葉の組み合わせが構成するイメージをA4用紙等に描き、見せ合う。絵の巧さを競うのではなく、他者の絵の魅力を発見し、共通理解することを重視しながら、コミュニケーションを深めていく。
4)「名札を作ろう!」(佐藤 匠)
適応指導教室や転入直後のクラスのアイスブレイクを目的とした名札づくりワークショップで、既製のスタンプ等を利用して、葉書サイズの名札を作成し、身に付けておく(首からかける)ものである。自作による名札への愛着が身に付けやすさや、ワークショップ中のコミュニケーションによって、お互いの呼びかけや声かけの助けにもなる。
5)「ココカラ」(頭川 大志)
質問回答形式のカードゲームで、参加人数別の十二面体と六面体の2種のサイコロにより、初対面同士の会話を誘発する。コミュニティ用カードを追加できる仕様となっており、今回は高尾山学園のためのカードを含めている。講座学習(クラブ活動)時の検証とアンケート調査により、「初対面同士の会話のしやすさ」の向上が確認できた。
6)「グンテ」(鈴木 共生)
「理想の自分」の表現を目的とするオリジナル軍手人形「グンテ」の制作ワークショップで、基本的に一対の軍手とたこ糸、手芸用の顔パーツ等を材料に1時間程度で実施することができる。必要な道具はハサミのみで、針と糸は必要としない。工作によるストレスの解消や、夢や憧れを視覚化することで、将来について考える機会を作る。
7)「しーぽん」(田村 美貴)
適応指導教室のアイスブレイクや、高尾山学園で年4回実施される交流イベントのコンテンツとして考案した4人対戦型の卓球イベントで、所定のルールにもとづき、教室の机を組み合わせて卓球台を作り、持ち寄った身近なものでネットやラケットとする。ラリーの継続を競うなど、卓球経験の有無に限らず、参加者全員で楽しむ。
8)「お仲間いっぱい集めまstar 」 (成田 真一郎)
年4回の転入時のアイスブレイクを目的とした交換式カードゲームで、各自、星座に対応したカードに自分に対する質問を記入し、他者と交換及び質問回答しあう。手元にさまざまな星座カードが集まっていくことで、子どもたちの収集欲が刺激され、結果的に能動的なコミュニケーションが展開していく。
1)友だちづくりを支援する自己紹介ツール
「あいさつカラー」
3)カードの組み合わせをイラスト化するゲーム
「ImageMaker」
5)初めましての会話を誘発するカードゲーム「ココカラ」
7)交流を刺激する卓球イベント「しーぽん」(ルールブック)